タレパン加工とは?特徴とレーザー加工との違い

板金加工の基礎知識

タレパン加工とは?特徴とレーザー加工との違い

板金加工の現場で欠かせない加工方法の一つが「タレパン加工」です。金属板に穴を開けたり、形を打ち抜いたりする加工ですが、近年主流になっているレーザー加工とどう違うのか、それぞれの特徴は何かを理解している人は意外と少ないかもしれません。

この記事では、タレパン加工の基本から、その特徴、レーザー加工との違い、それぞれの使い分けまで、製造現場に初めて関わる人でも理解できるように解説します。

タレパン加工とは

タレパン加工とは、「タレットパンチプレス」という機械を使って、金属板に穴を開けたり、形状を打ち抜いたりする加工方法です。

「タレパン」は「タレットパンチプレス」の略称で、現場では一般的にこの略称が使われます。

基本的な仕組み

タレパン加工は、以下の仕組みで金属板を加工します。

  1. パンチ(上型)ダイ(下型)を使用
  2. パンチが高速で板金を打ち抜く
  3. 打ち抜かれた部分が穴になる
  4. 板金を移動させながら連続的に加工

イメージ:
大きな穴あけパンチのようなもので、様々な形の穴を次々に開けていくイメージです。

タレット(回転工具台)の役割

「タレット」は回転式の工具ホルダーで、多数の金型(パンチとダイのセット)を搭載しています。

特徴:

  • 円形、角形、長穴など様々な形状の金型を搭載(通常20〜60種類)
  • タレットが回転して必要な金型を選択
  • 金型交換なしで多様な加工が可能

CNC制御

現代のタレパンは、CNC(コンピュータ数値制御)で自動運転されます。

機能:

  • CADデータから自動でプログラム作成
  • 最適な加工順序を計算
  • 高速・高精度な加工
  • 無人運転も可能

タレパン加工でできること

1. 穴あけ加工

様々な形状の穴を開けることができます。

加工できる穴の種類:

  • 丸穴:様々な直径の円形穴
  • 角穴:正方形、長方形の穴
  • 長穴:長円形の穴
  • D穴:片側が直線の穴
  • 異形穴:複雑な形状の穴

2. 打ち抜き加工

外形や内形を打ち抜いて、製品形状を作ります。

方法:

  • 単発打ち抜き:一度に大きな形状を打ち抜く
  • ニブリング:小さな穴を連続して開け、線や曲線を作る

3. 成形加工

専用の金型を使えば、穴あけ以外の加工も可能です。

できる加工:

  • バーリング:穴の周りを立ち上げる
  • カウンターシンク:皿穴加工
  • エンボス:凸部を作る
  • ルーバー:スリット状の突起を作る
  • ディンプル:浅いくぼみを作る

タレパン加工の特徴

メリット

1. 加工速度が速い

単純な穴あけでは、タレパンは非常に高速です。

  • 1分間に数百回のパンチング
  • 小さな穴を大量に開ける場合に有利

2. ランニングコストが低い

電力消費が比較的少なく、消耗品も少ないです。

  • レーザーのようなガスやレンズ交換が不要
  • 金型は長期間使用可能(数万〜数十万ショット)

3. 多様な成形加工ができる

穴あけだけでなく、バーリングやエンボスなど立体的な加工が可能です。

  • レーザー加工では不可能な3次元加工
  • 後工程の削減

4. エッジがきれい

打ち抜きによる加工のため、エッジが鋭く直角になります。

  • バリが少ない(適切な金型使用時)
  • 熱影響がない

5. 材料の選択肢が広い

反射率の高い材料でも加工できます。

  • アルミ、銅、真鍮など反射材も問題なし
  • レーザーが苦手とする材料にも対応

デメリット

1. 金型の準備が必要

穴の形状ごとに金型が必要です。

  • 金型のない形状は加工できない
  • 特殊形状は専用金型を製作(数万円〜)
  • 金型交換に時間がかかる場合がある

2. 複雑な曲線は苦手

直線や単純な曲線は得意ですが、複雑な曲線は加工効率が落ちます。

  • ニブリングで曲線を作ると時間がかかる
  • 滑らかな曲線には限界がある

3. 板厚の制約

加工できる板厚には限界があります。

  • 一般的に6mm程度まで(機種や材質による)
  • 厚板はレーザーや他の加工方法が有利

4. 騒音と振動

打ち抜き加工のため、騒音と振動が発生します。

  • 防音対策が必要な場合がある
  • 建物の構造によっては設置場所に制約

5. 変形のリスク

パンチングの力で板金が変形することがあります。

  • 薄板や大きな穴は変形しやすい
  • 適切な加工順序と固定が重要

レーザー加工との違い

タレパン加工としばしば比較されるのが、レーザー加工です。両者の違いを理解することが、適切な使い分けの鍵となります。

加工原理の違い

項目 タレパン加工 レーザー加工
加工方法 機械的に打ち抜く レーザー光で溶かして切断
接触 接触加工 非接触加工
熱影響 なし あり(熱影響部が発生)
工具 金型が必要 金型不要

性能比較

項目 タレパン加工 レーザー加工
加工速度 単純な穴あけは速い 複雑な形状も一定速度
複雑形状 苦手(ニブリング必要) 得意
精度 ±0.1mm程度 ±0.05mm程度
最小穴径 板厚程度(金型による) 0.1mm程度も可能
板厚範囲 〜6mm程度 〜25mm以上も可能
材質 反射材も可 反射材は困難な場合あり
成形加工 可能 不可能
エッジ品質 直角、シャープ 若干の丸み、変色

コスト比較

項目 タレパン加工 レーザー加工
設備投資 比較的安価(数千万円〜) 高価(数千万円〜億単位)
ランニングコスト 低い(電気代、金型メンテナンス) やや高い(電気代、ガス、レンズ交換)
金型費用 必要(標準形状は安価) 不要
段取り時間 金型交換あり プログラム変更のみ

使い分けの目安

タレパン加工が有利な場合

  • 丸穴、角穴など単純形状が多い
  • 同じ形状の穴を大量に開ける
  • バーリングなど成形加工が必要
  • 薄板(〜3mm程度)の加工
  • アルミ、銅など反射材の加工
  • ランニングコストを抑えたい
  • 量産品

レーザー加工が有利な場合

  • 複雑な形状、自由曲線が多い
  • 多品種少量生産
  • 試作・デザイン変更が多い
  • 厚板(6mm以上)の加工
  • 微細な加工が必要
  • 金型の製作コストを避けたい
  • 設計変更が頻繁

併用が効果的な場合

多くの板金加工工場では、タレパンとレーザーを両方保有し、用途に応じて使い分けています。

  • 単純な穴はタレパン、複雑な外形はレーザー
  • バーリングはタレパン、その後レーザーで外形切断
  • 製品の特性に応じて最適な組み合わせを選択

タレパン加工の工程

実際のタレパン加工の流れを説明します。

1. 設計・プログラム作成

  • CADで製品を設計
  • CAM(加工支援)ソフトで加工プログラム作成
  • 使用する金型を選定
  • 加工順序を最適化

2. 材料準備

  • 定尺板をシャーリングで切断
  • タレパン機にセット
  • 位置決め

3. 金型セット

  • 必要な金型をタレットに装着
  • 金型の点検(摩耗、欠損の確認)

4. 加工実行

  • プログラムに従って自動加工
  • 板金が移動しながら連続パンチング
  • 作業者は進行を監視

5. 取り外し・検査

  • 加工済み板金を取り外し
  • 寸法検査
  • 外観検査
  • バリ取り(必要に応じて)

6. 後工程

  • 曲げ加工
  • 溶接
  • 表面処理

タレパン加工で注意すべきポイント

1. 金型の管理

金型の状態が加工品質を左右します。

注意点:

  • 定期的な研磨・メンテナンス
  • 摩耗状態のチェック
  • 欠けや割れの早期発見
  • 適切な保管

2. 加工順序

加工順序を誤ると、変形やズレが発生します。

基本原則:

  • 大きな穴→小さな穴の順
  • 内側→外側の順
  • 固定部分を最後まで残す
  • 変形しやすい部分は慎重に

3. バリの発生

バリ(打ち抜き時の突起)は品質問題になります。

対策:

  • 金型のクリアランス(隙間)を適正に
  • 金型の研磨
  • 適切な板押さえ圧
  • 材質に合った加工条件

4. 騒音対策

パンチング音は大きく、作業環境に影響します。

対策:

  • 防音カバーの設置
  • 低騒音型の機械選定
  • 作業者の耳栓着用

最新のタレパン技術

複合機(コンビマシン)

タレパンとレーザー、またはタレパンとシャーリングを組み合わせた複合機も登場しています。

メリット:

  • 一台で多様な加工が可能
  • 工程集約による効率化
  • 設置スペースの削減

高速化技術

パンチングスピードの高速化が進んでいます。

  • 1分間1000回以上のパンチング
  • 高速移動による生産性向上

自動化・IoT化

  • 自動材料供給装置
  • 自動仕分け・積載
  • 稼働状況のリアルタイム監視
  • 予知保全システム

まとめ

タレパン加工は、板金加工における重要な技術の一つです。

重要なポイント:

  • タレパンは金型で板金を打ち抜く機械的加工方法
  • 高速で単純形状の穴あけが得意
  • バーリングなど成形加工も可能
  • ランニングコストが低い
  • レーザー加工は複雑形状や厚板が得意
  • タレパンとレーザーは用途に応じて使い分ける
  • 金型管理と加工順序が品質を左右する
  • 複合機や自動化など技術は進化中

タレパン加工とレーザー加工は、どちらが優れているというものではなく、それぞれに得意・不得意があります。製品の形状、生産数量、コスト、納期などを総合的に判断して、最適な加工方法を選択することが重要です。両方の特性を理解し、適材適所で活用することで、効率的で高品質な板金加工が実現できるでしょう。

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