印刷データ入稿時の注意点

印刷加工

印刷データ入稿時の注意点

製造業の現場では、製品の銘板、操作パネル、パッケージなど、様々な印刷物を外部に発注する機会があります。その際に必要となるのが「データ入稿」です。しかし、データの作り方や入稿方法を誤ると、印刷ミス、納期遅延、追加費用の発生など、様々な問題が起こります。

この記事では、印刷データを入稿する際に注意すべきポイントを、初めてデータ入稿を行う人でも理解できるように解説します。

データ入稿とは

データ入稿とは、印刷に必要なデザインデータや原稿を、印刷会社に提出することです。

現代の印刷は、ほとんどがデジタルデータをもとに行われます。そのため、正しい形式で、正しい設定のデータを入稿することが、印刷物の品質を左右します。

入稿データに不備があると、以下のような問題が発生します。

  • 印刷ミス:色が違う、文字が欠ける、画像が粗いなど
  • 納期遅延:データの修正や確認に時間がかかる
  • 追加費用:データ修正作業が有償になることがある
  • トラブル:印刷後に問題が発覚し、刷り直しが必要になる

これらを防ぐために、入稿前にしっかりと確認することが重要です。

入稿前の基本確認事項

データを作成する前に、まず以下の点を確認しましょう。

1. 印刷会社の入稿仕様を確認する

印刷会社によって、対応するファイル形式、カラーモード、解像度などの仕様が異なります。必ず印刷会社の入稿ガイドラインやテンプレートを確認してからデータを作成しましょう。

確認すべき項目:

  • 対応ファイル形式(PDF、AI、PSDなど)
  • 推奨ソフトウェアとバージョン
  • カラーモード(CMYK、RGB、特色など)
  • 解像度
  • 塗り足しの有無とサイズ
  • フォントの扱い(アウトライン化の要否)

2. 印刷物の仕様を明確にする

  • サイズ:仕上がりサイズを正確に
  • 印刷方式:オフセット、デジタル、スクリーン印刷など
  • 色数:フルカラー(CMYK)、単色、特色など
  • 用紙・材質:紙、フィルム、金属など
  • 加工:箔押し、エンボス、ラミネートなど
  • 部数と納期

3. 使用するソフトウェアを確認する

一般的に使用されるソフトウェアは以下の通りです。

  • Adobe Illustrator:ロゴ、イラスト、図版など
  • Adobe Photoshop:写真、画像編集
  • Adobe InDesign:ページもの、カタログ、パンフレット

印刷会社が推奨するソフトウェアとバージョンを使用しましょう。

データ作成時の注意点

1. カラーモードの設定

印刷では基本的にCMYKカラーモードを使用します。

RGBとCMYKの違い

項目 RGB CMYK
用途 モニター表示(Web、TV) 印刷
色の表現 光の三原色(加法混色) インクの三原色+黒(減法混色)
色域 広い(鮮やかな色が表現できる) 狭い(印刷できない色がある)
注意点 印刷すると色が沈む・くすむ モニターより暗く見える

重要な注意点:

  • RGBモードで作成したデータは、印刷時に自動的にCMYKに変換されますが、色味が大きく変わることがあります
  • 特に鮮やかな青や緑、オレンジなどは、CMYKでは再現できない場合があります
  • 最初からCMYKモードで作成するか、入稿前に必ずCMYKに変換して色を確認しましょう

特色(スポットカラー)の使用

企業のコーポレートカラーなど、正確な色再現が必要な場合は、特色(DICカラー、PANTONEなど)を指定することもあります。

特色使用時の注意:

  • 特色は色数にカウントされ、コストが上がります
  • 印刷会社に特色の使用を事前に伝える
  • 特色とCMYKを混在させる場合は、版の構成を確認

2. 解像度の設定

画像の解像度は、印刷品質に直結します。

推奨解像度:

  • 一般的な印刷物:300〜350dpi(実寸サイズで)
  • 大判ポスター(遠くから見る):150〜200dpi
  • 精密な印刷:400dpi以上

注意点:

  • 解像度が低すぎると、印刷物がぼやけたりドットが見えたりします
  • 解像度が高すぎると、ファイルサイズが大きくなり、処理が遅くなります
  • 画像を拡大すると解像度が下がるため、元画像は実寸サイズで必要な解像度を確保しておきます
  • Webからダウンロードした画像は解像度が低い(72dpi程度)ことが多く、印刷には不向きです

3. 塗り足しの設定

塗り足しとは、仕上がりサイズより外側まで背景色や画像を伸ばしておくことです。

なぜ必要か:

印刷後の断裁では、わずかなズレが生じます。塗り足しがないと、仕上がりの端に白い線が出てしまうことがあります。

塗り足しのサイズ:

  • 一般的に上下左右3mm(印刷会社により異なる)
  • 大判印刷では5〜10mm必要な場合もあります

注意点:

  • 背景が白(または紙の色)の場合は塗り足し不要
  • 重要な文字や図柄は、仕上がり線から3mm以上内側に配置(文字切れ防止)
  • 塗り足しを含めたサイズでデータを作成します

例:A4サイズ(210×297mm)の印刷物で塗り足し3mmの場合
データサイズ:216×303mm(上下左右に3mmずつ追加)

4. フォントの扱い

フォントの扱いを誤ると、文字化けや意図しないフォントに置き換わるトラブルが発生します。

フォントのアウトライン化

アウトライン化とは、文字データを図形(パス)に変換することです。

メリット:

  • フォントがない環境でも正しく表示される
  • 文字化けを防げる

デメリット:

  • アウトライン化後は文字として編集できない
  • 細い文字は太く見えることがある

作業手順(Illustratorの場合):

  1. すべてのテキストを選択
  2. 「書式」→「アウトラインを作成」を実行
  3. アウトライン化前のデータも別名で保存しておく(編集用)

注意点:

  • アウトライン化漏れがないか確認(非表示レイヤーにも注意)
  • 小さい文字(6pt以下)は、アウトライン化で潰れることがあるため、印刷会社に相談
  • PDF入稿の場合、フォントを埋め込むことで文字化けを防げる場合もあります

使用できないフォント

  • システムフォント:Mac/Windows標準のフォントは印刷に適さない場合があります
  • 外字・特殊文字:環境依存文字は避ける

5. 画像のリンクと埋め込み

IllustratorやInDesignで画像を配置する際、「リンク」と「埋め込み」の2つの方法があります。

方式 特徴 入稿時の注意
リンク 元画像ファイルを参照。ファイルサイズが軽い リンク画像も一緒に入稿が必要。リンク切れに注意
埋め込み 画像がデータ内に取り込まれる。ファイルサイズが重い データファイルのみで完結

推奨:

  • 入稿時は画像を埋め込むか、リンク画像も一緒に入稿します
  • リンク画像を入稿する場合は、フォルダにまとめてデータと一緒に提出
  • リンク切れがないか、入稿前に必ず確認

6. トンボ(トリムマーク)の設定

トンボとは、印刷物を正確に断裁するための目印です。

種類:

  • コーナートンボ:四隅に配置され、仕上がり位置を示す
  • センタートンボ:中央に配置され、位置合わせに使う

注意点:

  • 印刷会社によっては、トンボを自動で付けるため不要な場合もあります
  • トンボの有無は印刷会社に確認
  • トンボは印刷範囲外に配置

7. オーバープリント設定の確認

オーバープリントとは、下のインクの上に重ねて印刷する設定です。意図せずオーバープリントが設定されていると、色が透けたり、予期しない色になったりします。

確認方法(Illustrator):

  • 「表示」→「オーバープリントプレビュー」で確認
  • 黒(K100%)は通常オーバープリント設定にしますが、それ以外の色は基本的にオフにします

8. 線幅の設定

細すぎる線は印刷できない場合があります。

推奨線幅:

  • 最低0.3pt(約0.1mm)以上
  • 細い線は太めに設定するか、色を濃くする

注意点:

  • 線幅0.1pt以下は印刷で消えることがあります
  • 髪の毛ほどの細い線(ヘアライン)は避ける

ファイル形式別の注意点

PDF入稿

PDF(Portable Document Format)は、多くの印刷会社が推奨する入稿形式です。

メリット:

  • 環境に依存しない
  • フォントや画像を埋め込める
  • 印刷会社での確認が容易

PDF作成時の設定(Illustratorの場合):

  1. 「ファイル」→「別名で保存」→「PDF」を選択
  2. PDF規格は「PDF/X-1a」または「PDF/X-4」を選択(印刷会社指定に従う)
  3. 「トンボと裁ち落とし」で塗り足しを設定
  4. 「出力」でカラーをCMYKに設定
  5. 「詳細設定」でフォントを100%埋め込むよう設定

注意点:

  • Web用の軽量PDFは印刷に不向き(画像が圧縮されている)
  • 保存後、PDFを開いて内容を確認
  • PDF/X規格は印刷に最適化された規格

Illustrator(AI)形式入稿

注意点:

  • バージョンを印刷会社が対応しているものに保存(通常CS6以降)
  • フォントはアウトライン化
  • 画像は埋め込むか、リンク画像も一緒に入稿
  • 不要なレイヤーやオブジェクトを削除
  • アートボードのサイズを仕上がりサイズ+塗り足しに設定

Photoshop(PSD)形式入稿

注意点:

  • レイヤーを統合(印刷会社によっては統合不要)
  • カラーモードをCMYKに変換
  • 解像度を確認(300〜350dpi)
  • 不要なチャンネルやパスを削除
  • TIFF形式での保存も検討(容量削減)

入稿時のチェックリスト

入稿前に以下の項目を必ず確認しましょう。

基本項目

  • □ ファイル形式は印刷会社の指定に合っているか
  • □ ファイル名は分かりやすいか(日本語、スペース、特殊文字は避ける)
  • □ サイズは正しいか(塗り足し含む)
  • □ 解像度は十分か(300dpi以上)
  • □ カラーモードはCMYKか

デザイン項目

  • □ 塗り足しは設定されているか(上下左右3mm)
  • □ 重要な要素は仕上がり線から3mm以上内側にあるか
  • □ フォントはアウトライン化されているか
  • □ 画像は埋め込まれているか、またはリンク画像も入稿するか
  • □ リンク切れはないか
  • □ 線幅は0.3pt以上か
  • □ オーバープリント設定は正しいか

色の確認

  • □ RGBの画像が残っていないか
  • □ 特色を使用する場合、印刷会社に伝えたか
  • □ 黒はリッチブラック(C40%、M40%、Y40%、K100%)を使っているか(広い面積の黒の場合)

最終確認

  • □ 誤字脱字はないか
  • □ デザインの意図通りになっているか
  • □ 不要なレイヤーやオブジェクトは削除したか
  • □ 印刷指示書を作成したか(用紙、部数、加工など)

入稿後の流れ

1. 印刷会社からの確認連絡

入稿後、印刷会社からデータチェックの結果が連絡されます。不備があれば修正が必要です。

2. 校正(プルーフ)の確認

印刷前に、色味や仕上がりを確認するための校正が出される場合があります。

校正の種類:

  • 本機校正:実際の印刷機で試し刷り。最も正確だがコストが高い
  • 簡易校正(デジタルプルーフ):専用プリンターで出力。コストが低い
  • PDFプルーフ:PDFでの確認。色の再現性は低い

校正確認のポイント:

  • 文字の誤字脱字
  • レイアウトの崩れ
  • 色味(ただし簡易校正は参考程度)
  • 画像の配置ミス

3. 校了

校正を確認し、問題がなければ「校了」として印刷に進みます。校了後の修正は基本的にできません。

よくあるトラブルと対策

トラブル1:色が思ったより暗い・くすんでいる

原因:RGBで作成したデータをCMYKに変換したため

対策:

  • 最初からCMYKモードで作成
  • 事前に本機校正で色を確認
  • 鮮やかな色が必要な場合は特色の使用を検討

トラブル2:文字が欠けたり、フォントが変わっている

原因:フォントのアウトライン化漏れ、またはフォントが埋め込まれていない

対策:

  • すべてのフォントをアウトライン化
  • 非表示レイヤーも確認
  • PDFの場合はフォントを100%埋め込む

トラブル3:端に白い線が出る

原因:塗り足し不足

対策:

  • 背景を仕上がりサイズより3mm外側まで伸ばす
  • 塗り足しを含めたサイズでデータを作成

トラブル4:画像がぼやけている・粗い

原因:解像度不足

対策:

  • 画像を実寸サイズで300dpi以上に設定
  • 拡大は避け、元画像を高解像度で用意
  • Web画像は使用しない

トラブル5:細い線が消えている

原因:線幅が細すぎる

対策:

  • 線幅を0.3pt以上に設定
  • 細い線は太めにするか色を濃くする

まとめ

印刷データの入稿は、正しい知識と丁寧な確認作業が品質を左右します。

重要なポイント:

  • 印刷会社の入稿仕様を必ず確認する
  • カラーモードは基本的にCMYK、解像度は300dpi以上
  • 塗り足しは上下左右3mm、重要な要素は仕上がり線から3mm以上内側に配置
  • フォントは必ずアウトライン化する
  • 画像は埋め込むか、リンク画像も一緒に入稿
  • 入稿前にチェックリストで最終確認
  • 校正で必ず内容を確認してから校了する

初めてのデータ入稿では戸惑うことも多いですが、一つひとつの注意点を押さえることで、トラブルを防ぎ、理想通りの印刷物を完成させることができます。分からないことがあれば、印刷会社に事前に相談することも大切です。

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