製造現場で使われるセンサーの種類と役割
製造業の現場には、目に見えない場所で働いている様々なセンサーがあります。製品の有無を検知したり、温度を測定したり、設備の異常を検知したり。これらのセンサーは、自動化、品質管理、安全確保において欠かせない存在です。
しかし「センサー」と一口に言っても、その種類は非常に多く、それぞれ異なる原理で動作しています。この記事では、製造現場で使われる代表的なセンサーの種類から、それぞれの役割、選定のポイントまで、初めて製造業に関わる人でも理解できるように解説します。
センサーとは
センサーとは、物理的な現象や状態を検知し、電気信号に変換する装置です。
人間で言えば、目、耳、鼻、舌、皮膚といった「感覚器官」に相当します。センサーは機械の感覚器官として、様々な情報を取得し、制御装置に伝える役割を果たします。
センサーの基本的な働き
- 検知:物理現象(温度、圧力、位置など)を感知する
- 変換:感知した情報を電気信号に変える
- 出力:電気信号を制御装置やコンピュータに送る
製造現場でのセンサーの役割
- 自動化:製品や部品の位置を検知し、自動で加工や組立
- 品質管理:寸法、温度、圧力などを測定し、品質を確保
- 安全確保:人や障害物を検知し、事故を防止
- 設備管理:異常な振動や温度を検知し、故障を予防
- データ収集:生産状況を把握し、改善につなげる
製造現場で使われるセンサーの種類
製造現場では、検知対象や用途に応じて様々なセンサーが使われています。
1. 近接センサー(位置検出センサー)
物体の接近や存在を非接触で検知するセンサーです。製造現場で最も広く使われているセンサーの一つです。
種類と特徴
誘導型近接センサー
- 検知対象:金属
- 検知距離:数mm〜数十mm
- 特徴:金属のみを検知。非金属は検知しない
- 用途:金属部品の有無確認、位置決め
- メリット:安価、丈夫、油や水に強い
静電容量型近接センサー
- 検知対象:金属、樹脂、液体、粉体など
- 検知距離:数mm〜数十mm
- 特徴:誘電率の高いものを検知
- 用途:液面検知、樹脂部品の検知
磁気近接センサー
- 検知対象:磁石
- 検知距離:数mm〜100mm以上
- 特徴:磁石を検知。壁越しでも検知可能
- 用途:シリンダーのピストン位置検出
製造現場での使用例
- コンベア上の製品の有無確認
- ロボットのワーク位置決め
- 扉の開閉検知
- 治具の位置確認
2. 光電センサー
光を使って物体を検知するセンサーです。検知距離が長く、様々な物体を検知できます。
検出方式の種類
透過型
- 構成:投光器と受光器を向かい合わせに設置
- 原理:光を遮ることで検知
- 検知距離:数m〜数十m
- 特徴:検知精度が高い、長距離検知可能
- 用途:搬送ラインの製品検知、安全柵
反射型(拡散反射型)
- 構成:投光器と受光器が一体
- 原理:物体からの反射光を検知
- 検知距離:数cm〜数m
- 特徴:配線が簡単、設置しやすい
- 用途:製品の有無確認、カウント
回帰反射型
- 構成:投光器・受光器一体と反射板
- 原理:反射板からの光を物体が遮ることで検知
- 検知距離:数m〜十数m
- 特徴:透過型と反射型の中間的特性
- 用途:搬送ラインの製品検知
製造現場での使用例
- コンベア上の製品カウント
- 段ボール箱の検知
- 積載物の高さ検出
- 安全エリアの侵入検知
3. 画像センサー(ビジョンセンサー)
カメラで撮影した画像を解析して、物体の有無、位置、形状、不良などを判定するセンサーです。
特徴
- 検知内容:形状、位置、寸法、文字、色、欠陥など
- 情報量:非常に多い情報を一度に取得
- 柔軟性:プログラム変更で様々な検査に対応
製造現場での使用例
- 外観検査(キズ、汚れ、欠けの検出)
- 部品の組付確認
- 印刷の位置・品質確認
- 文字・バーコードの読み取り
- ロボットピッキングの位置認識
4. 温度センサー
温度を測定するセンサーです。品質管理や設備管理に不可欠です。
種類と特徴
熱電対(サーモカップル)
- 測定範囲:-200℃〜1700℃(種類による)
- 特徴:広範囲の温度測定、応答速度が速い
- 用途:炉内温度、溶接温度、高温プロセス
測温抵抗体(Pt100など)
- 測定範囲:-200℃〜600℃
- 特徴:高精度、安定性が高い
- 用途:精密温度管理、恒温槽
サーミスタ
- 測定範囲:-50℃〜300℃
- 特徴:小型、安価、高感度
- 用途:一般的な温度管理
赤外線温度センサー
- 測定方式:非接触
- 特徴:遠隔測定、高速応答
- 用途:移動物体の温度、高温物体
製造現場での使用例
- 成形機の温度管理
- 炉内温度の監視
- モーターや軸受けの温度監視
- 製品温度の品質管理
- 環境温度の管理
5. 圧力センサー
気体や液体の圧力を測定するセンサーです。
種類
- ゲージ圧センサー:大気圧を基準とした圧力
- 絶対圧センサー:真空を基準とした圧力
- 差圧センサー:2点間の圧力差
製造現場での使用例
- 空気圧機器の圧力監視
- 油圧機器の圧力管理
- 真空チャックの吸着確認
- 配管の圧力監視
- プレス機の加圧力管理
6. 変位センサー(距離センサー)
物体までの距離や変位量を高精度に測定するセンサーです。
種類と特徴
レーザー変位センサー
- 測定範囲:数mm〜数百mm(機種による)
- 精度:数μm
- 特徴:高精度、非接触
- 用途:厚み測定、段差測定、形状測定
超音波変位センサー
- 測定範囲:数cm〜数m
- 特徴:透明物も測定可、比較的安価
- 用途:液面レベル、距離測定
製造現場での使用例
- 製品の厚み測定
- 溶接ビードの高さ測定
- 位置決めの精度確認
- タンク内の液面レベル監視
7. 振動センサー
機械や設備の振動を検知・測定するセンサーです。
種類
- 加速度センサー:振動の加速度を測定
- 速度センサー:振動の速度を測定
- 変位センサー:振動の変位を測定
製造現場での使用例
- 回転機械の異常振動検知
- 軸受けの状態監視
- 設備の劣化診断
- 予知保全のためのデータ収集
8. 流量センサー
液体や気体の流量を測定するセンサーです。
種類
- 電磁流量計:導電性液体の流量測定
- 超音波流量計:非接触で流量測定
- 渦流量計:気体・液体の流量測定
- 熱式流量計:微小流量の測定
製造現場での使用例
- 冷却水の流量管理
- 薬液の供給量管理
- 圧縮空気の使用量監視
- プロセス液の流量制御
9. 荷重センサー(ロードセル)
力や重量を測定するセンサーです。
製造現場での使用例
- 製品の重量測定
- プレス機の加圧力測定
- ロボットの力覚制御
- 材料の計量
- 締付トルクの管理
10. 湿度センサー
空気中の湿度を測定するセンサーです。
製造現場での使用例
- クリーンルームの湿度管理
- 塗装ブースの環境管理
- 材料保管庫の湿度監視
- 静電気対策
センサー選定のポイント
適切なセンサーを選ぶには、以下の要素を考慮する必要があります。
1. 検知対象の明確化
- 何を検知したいのか(物体、温度、圧力など)
- 対象物の材質(金属、樹脂、透明体など)
- 対象物のサイズ
- 移動速度
2. 検知環境
- 温度:動作温度範囲は適切か
- 湿度:防水・防塵性能は十分か
- 振動・衝撃:耐久性は十分か
- ノイズ:電気的ノイズへの耐性
- 油・薬品:耐薬品性は必要か
3. 性能要件
- 検知距離・範囲:必要な検知距離を満たすか
- 精度:求められる精度を満たすか
- 応答速度:生産速度に追従できるか
- 繰り返し精度:安定した検出が可能か
4. 取り付け・配線
- 設置スペースは十分か
- 取り付け方法は適切か
- 配線の引き回しは可能か
- メンテナンス性は良いか
5. コストと信頼性
- 初期コストは予算内か
- 寿命・耐久性は十分か
- 故障時の影響は大きいか
- メーカーのサポート体制
センサーの保守・メンテナンス
センサーを長く正確に使い続けるには、適切な保守が必要です。
日常点検
- 外観確認:破損、汚れ、緩みの有無
- 動作確認:正常に動作しているか
- 表示確認:インジケータの点灯状態
- 配線確認:断線、接触不良の有無
定期メンテナンス
- 清掃:レンズや検知面の汚れ除去
- 校正:測定精度の確認と調整
- 部品交換:消耗品の交換
- 記録:メンテナンス履歴の記録
トラブル発生時の対応
- 現象の確認:どのような不具合か
- 原因の切り分け:センサーか、配線か、制御側か
- 応急処置:可能な範囲で対応
- 専門家への相談:必要に応じてメーカーに連絡
- 再発防止:原因を記録し、対策を講じる
センサーを活用したスマートファクトリー
近年、IoT技術の発展により、センサーの活用方法が広がっています。
データ収集と分析
- 多数のセンサーから常時データを収集
- ビッグデータ分析で傾向を把握
- AIで異常を予測
予知保全
- 振動や温度の変化から設備の劣化を検知
- 故障前に保全を実施
- 突発故障の削減
生産の見える化
- リアルタイムで生産状況を把握
- ボトルネック工程の特定
- 稼働率の向上
品質の安定化
- プロセスパラメータの常時監視
- 異常の早期発見
- トレーサビリティの確保
よくある誤解と注意点
誤解1:「高価なセンサーほど良い」
用途に合った適切なセンサーを選ぶことが重要です。過剰な性能は無駄なコストになります。
誤解2:「一度設置すれば永久に使える」
センサーも経年劣化します。定期的な点検と校正が必要です。
誤解3:「センサーは絶対に間違えない」
センサーも誤検出することがあります。重要な判定には二重チェックや異常検知の仕組みが必要です。
注意点:環境の影響
センサーは環境条件(温度、湿度、ノイズ、振動など)の影響を受けます。設置環境を考慮した選定が重要です。
まとめ
センサーは、製造現場の目であり耳であり、自動化と品質管理の要です。
重要なポイント:
- センサーは物理現象を電気信号に変換する装置
- 近接、光電、画像、温度、圧力、変位、振動、流量など多様な種類がある
- それぞれのセンサーに得意・不得意がある
- 検知対象、環境、性能要件を考慮して選定
- 定期的な点検・メンテナンスが精度維持の鍵
- IoTやAIと組み合わせて予知保全や品質向上に活用
- 適材適所の選定と適切な管理で真価を発揮
センサー技術は日々進化しており、より高性能で小型、低コストなセンサーが次々と登場しています。製造現場でセンサーの種類と役割を正しく理解することは、自動化の推進、品質向上、効率化を実現する第一歩となります。適切なセンサーを選び、正しく使うことで、より安全で高品質な製造を実現できるでしょう。


コメント