カメラ検査(画像検査)とは?導入メリットと注意点
製造業の品質管理において、目視検査に代わる技術として注目されているのが「カメラ検査(画像検査)」です。人間の目に頼らず、カメラとコンピュータで製品の良否を判定するこの技術は、多くの製造現場で導入が進んでいます。
しかし「カメラ検査を導入すれば完璧」というわけではありません。適切に導入しなければ、期待した効果が得られないこともあります。この記事では、カメラ検査の基本から、導入のメリット、そして導入時の注意点まで、製造現場に初めて関わる人でも理解できるように解説します。
カメラ検査(画像検査)とは
カメラ検査(画像検査)とは、カメラで製品を撮影し、その画像をコンピュータで解析して、良品か不良品かを自動判定する検査技術です。
別名として以下のように呼ばれることもあります。
- 画像検査
- ビジョン検査
- 外観検査装置
- マシンビジョン
- AI検査(AIを使用する場合)
基本的な仕組み
カメラ検査システムは、主に以下の要素で構成されます。
- カメラ:製品を撮影する
- 照明:適切に製品を照らす
- 画像処理ソフトウェア:画像を解析し、判定する
- コンピュータ:処理を実行する
- 出力装置:判定結果を表示・出力する
検査の流れ
- 製品が検査位置に来る
- カメラが製品を撮影
- 画像をコンピュータに送る
- ソフトウェアが画像を解析
- 良品・不良品を判定
- 結果を出力(OK/NGの表示、不良品の排除など)
この一連の流れは、通常1秒以内(製品によっては0.1秒以下)で完了します。
カメラ検査で検出できる不良
カメラ検査は、様々な種類の不良を検出できます。
1. 外観の不良
- キズ:製品表面の引っかきキズ、打痕など
- 汚れ:異物付着、油汚れ、指紋など
- 変色:色ムラ、焼け、変色
- 欠け:端部の欠損、割れ
- バリ:余分な突起
2. 印刷の不良
- 位置ズレ:印刷位置のズレ
- かすれ:印刷の濃度不足
- にじみ:インクの広がり
- 欠け:文字や図形の一部欠損
- 異物混入:印刷面のゴミ
3. 寸法・形状の不良
- 寸法異常:長さ、幅、直径などの規格外れ
- 変形:曲がり、ねじれ、反り
- 穴位置:穴の位置ズレ
- 形状不良:R形状の異常など
4. 組立の不良
- 部品の有無:部品の付け忘れ
- 部品の位置:組付位置の異常
- 向きの間違い:部品の上下・左右の逆
- 部品の種類:違う部品の取り付け
5. その他
- 文字・数字の読み取り(OCR):印字された情報の確認
- バーコード・QRコード:コードの読み取りと照合
- カウント:製品や部品の個数確認
カメラ検査の種類
カメラ検査は、判定方法によっていくつかの種類に分類されます。
1. パターンマッチング
良品の画像(マスター画像)と比較して、一致度で判定する方法です。
特徴:
- 設定が比較的簡単
- 形状や位置の確認に適している
- 細かい不良は検出しにくい場合がある
2. エッジ検出
製品の輪郭(エッジ)を検出し、寸法や形状を測定する方法です。
特徴:
- 寸法測定に適している
- 形状の異常を検出できる
- 照明条件の影響を受けやすい
3. 濃淡検査
画像の明るさ(濃淡)を分析して、キズや汚れを検出する方法です。
特徴:
- 微細なキズや汚れの検出に適している
- 均一な表面の検査に有効
- 照明の設定が重要
4. AI(ディープラーニング)検査
AIが大量の画像から学習し、複雑な判定を行う方法です。
特徴:
- 複雑な不良モードに対応できる
- 人間の判断に近い判定が可能
- 大量の学習データが必要
- 判定理由がブラックボックスになることがある
カメラ検査導入のメリット
1. 検査精度の安定
人間と違い、カメラは疲れず、集中力が低下しません。
具体的な効果:
- 時間による精度のバラツキがない
- 人による判定のバラツキがない
- 24時間安定した品質を維持
- 見逃し率の低減
データ例:
目視検査の見逃し率が10〜20%に対し、適切に設定されたカメラ検査では1〜5%程度まで低減できることがあります。
2. 検査速度の向上
カメラ検査は非常に高速です。
具体的な効果:
- 1個あたり0.1〜1秒程度で検査可能
- 目視検査の数倍〜数十倍の速度
- 全数検査が可能になる
- 生産速度に追従できる
3. 人手不足への対応
検査員を確保することが困難な状況でも、カメラ検査なら対応できます。
具体的な効果:
- 検査員の配置が不要(または削減可能)
- 検査員を付加価値の高い業務に配置できる
- 夜間や休日も無人で検査可能
4. 微細な不良の検出
人間の目では見えない微細な不良も検出できます。
具体的な効果:
- 0.01mm以下のキズも検出可能(カメラ性能による)
- わずかな色の違いも検出
- 拡大して詳細に観察
5. 客観的な判定記録
検査結果を画像とともに記録できます。
具体的な効果:
- トレーサビリティの確保
- 不良の傾向分析が可能
- クレーム発生時の証拠資料
- 品質改善のデータとして活用
6. 作業環境の改善
検査員の負担が軽減されます。
具体的な効果:
- 眼精疲労の軽減
- 単調作業からの解放
- 精神的プレッシャーの軽減
7. 多項目の同時検査
1台のカメラで複数の項目を同時に検査できます。
具体的な効果:
- キズ、汚れ、寸法、印刷などを一度に検査
- 検査工程の集約
- スペースの削減
カメラ検査導入時の注意点
カメラ検査は万能ではありません。導入時には以下の点に注意が必要です。
1. 初期投資が大きい
カメラ検査システムの導入には、相応の費用がかかります。
費用の目安:
- 簡易的なシステム:数十万円〜数百万円
- 標準的なシステム:数百万円〜1000万円程度
- 高度なシステム(AI、複数カメラ):1000万円以上
費用に含まれるもの:
- カメラ・レンズ
- 照明装置
- 画像処理装置・ソフトウェア
- 設置工事
- 初期設定・調整
対策:
- 投資対効果を明確にする
- 補助金制度の活用を検討
- 段階的な導入(効果の高い工程から)
- リースの活用
2. 設定と調整に時間がかかる
カメラ検査は、導入すればすぐに使えるわけではありません。
必要な作業:
- 照明条件の最適化
- 検査基準の設定
- 良品・不良品での検証
- パラメータの微調整
- 誤判定の削減
期間の目安:
簡単な検査で1〜2週間、複雑な検査では数ヶ月かかることもあります。
対策:
- メーカーの技術サポートを十分に受ける
- 試作・評価期間を十分に確保
- 段階的に精度を上げていく
3. 照明条件に大きく影響される
カメラ検査の精度は、照明条件で大きく変わります。
よくある問題:
- 外光(窓からの自然光)の影響で判定が不安定
- 反射で不良が見えない
- 影ができて誤検出
- 照明の経時劣化で判定が変わる
対策:
- 専用の照明装置を使用
- 外光の影響を遮断(カバーやブース)
- 複数方向からの照明
- 照明の定期的な点検・交換
4. すべての不良を検出できるわけではない
カメラ検査にも限界があります。
検出が難しい不良:
- 製品の裏面や内部の不良
- 見る角度によって見えたり見えなかったりする不良
- 機能的な不良(電気的特性など)
- 非常に複雑な判定が必要な不良
対策:
- 複数のカメラを設置
- 製品を回転させて全周を検査
- カメラ検査と他の検査方法を組み合わせる
- 検出できない不良は別の手段で検査
5. 誤判定(過検出・見逃し)が発生する
完璧な判定は困難で、誤判定が発生します。
過検出(良品を不良と判定)
問題:
- 歩留まりが低下する
- 廃棄コストが増える
- 生産性が低下する
原因:
- 検査基準が厳しすぎる
- 照明のバラツキ
- 材料の自然なバラツキを不良と判定
見逃し(不良を良品と判定)
問題:
- 不良品が流出する
- 顧客クレームにつながる
原因:
- 検査基準が甘すぎる
- 想定外の不良モード
- 照明条件の変化
対策:
- 適切なバランスで基準を設定
- 定期的に検証と調整
- 過検出品は人が再確認
- 継続的な改善
6. メンテナンスが必要
カメラ検査システムも、定期的なメンテナンスが必要です。
必要なメンテナンス:
- カメラレンズの清掃
- 照明の点検・交換
- ソフトウェアのアップデート
- 校正・精度確認
- バックアップ
放置すると:
- 検査精度が低下
- 誤判定が増加
- 突然の故障
7. 製品仕様変更への対応
製品の仕様が変わると、検査設定も変更が必要です。
対応が必要な変更:
- 製品形状の変更
- 色の変更
- 印刷デザインの変更
- 材質の変更
対策:
- 設定変更の手順を標準化
- 設定データをバックアップ
- 複数製品に対応できるシステムを選択
8. 専門知識を持つ人材が必要
カメラ検査システムを使いこなすには、ある程度の知識が必要です。
必要な知識:
- 画像処理の基礎
- 照明の知識
- 検査基準の設定方法
- トラブルシューティング
対策:
- メーカーの教育訓練を受ける
- マニュアルを整備
- 複数人が操作できるようにする
- 外部サポートの活用
カメラ検査導入の進め方
カメラ検査を成功させるための導入ステップを紹介します。
ステップ1:目的と要求仕様の明確化
- 何を検査したいのか
- どの程度の精度が必要か
- 検査速度(タクトタイム)の要求
- 予算の上限
ステップ2:実現可能性の調査
- カメラ検査で検出可能か
- 複数のメーカー・製品を比較
- デモ機での評価
- 費用対効果の試算
ステップ3:テスト導入
- 実際の製品で検証
- 良品・不良品での判定精度確認
- 誤判定率の測定
- 作業性の確認
ステップ4:本導入
- 設備の設置
- 初期設定と調整
- 作業者の教育
- 運用開始
ステップ5:運用と改善
- 定期的な精度確認
- 設定の最適化
- メンテナンス
- 効果の測定
カメラ検査と人の役割分担
カメラ検査を導入しても、人の役割は重要です。
カメラが得意なこと
- 高速・高精度な検査
- 微細な不良の検出
- 定量的な判定
- 24時間安定稼働
- 記録の保存
人が得意なこと
- 複雑な判断
- 想定外の異常への気づき
- 総合的な判断
- 柔軟な対応
- 改善提案
理想的な役割分担
- カメラ:定型的な検査、全数検査
- 人:最終確認、難易度の高い判定、システムの管理・改善
まとめ
カメラ検査は、製造業の品質管理を大きく変える可能性を持つ技術です。
重要なポイント:
- カメラ検査は高速・高精度で安定した検査を実現
- キズ、汚れ、寸法、印刷など様々な不良を検出可能
- 人手不足への対応、微細不良の検出、客観的記録などのメリット
- 初期投資、設定調整、照明条件、誤判定などの注意点がある
- すべての不良を検出できるわけではない
- 定期的なメンテナンスと継続的な改善が必要
- カメラと人の役割分担が重要
カメラ検査は「導入すれば終わり」ではなく、「導入してからが始まり」です。適切な設定、運用、改善を継続することで、真の効果を発揮します。自社の検査課題を正しく理解し、カメラ検査の特性を活かした導入を進めることで、品質と生産性の向上を実現できるでしょう。


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