外観検査で見つかる不良例|キズ・汚れ・印刷不良
製造業の現場で、製品の最終関門となるのが外観検査です。どんなに機能が優れていても、キズや汚れ、印刷のズレなどがあれば、製品の価値は大きく下がります。外観検査は製品の品質を守る重要な工程ですが、具体的にどのような不良を見つけるのか、正しく理解している人は意外と少ないかもしれません。
この記事では、外観検査で発見される代表的な不良の種類から、それぞれの原因、見分け方、予防策まで、製造現場に初めて関わる人でも理解できるように解説します。
外観検査とは
外観検査とは、製品の表面を目視または検査機器を使って観察し、キズ、汚れ、変形、色ムラなどの不良がないかを確認する検査のことです。
外観検査の目的は2つあります。
- 顧客満足の確保:外観不良は製品の第一印象を大きく損ない、顧客の信頼を失う原因になります
- 機能不良の発見:外観不良が機能不良のサインになることもあります。例えば、塗装の剥がれは内部の腐食を示唆することがあります
外観検査は、製品が出荷される前の最後の砦です。ここで不良品を見逃すと、顧客クレームや返品につながり、企業の信頼と利益に大きな損失をもたらします。
外観検査の基本的な分類
外観検査で見つかる不良は、大きく以下のカテゴリーに分類されます。
- キズ系の不良:引っかきキズ、打痕、割れなど
- 汚れ系の不良:異物付着、油汚れ、指紋など
- 表面処理の不良:塗装ムラ、メッキ不良、変色など
- 印刷の不良:位置ズレ、かすれ、にじみなど
- 形状の不良:変形、バリ、欠けなど
- 組立の不良:部品の欠品、逆組み、ガタツキなど
この記事では、特に重要なキズ、汚れ、印刷不良について詳しく解説します。
キズ系の不良
キズは外観不良の中で最も多く発生し、顧客からのクレームにつながりやすい不良です。
引っかきキズ(スクラッチ)
細い線状のキズです。製品表面を硬いものが引っかいた跡として現れます。
特徴:
- 直線的または曲線的な細い線
- 長さは数mmから数十cmまで様々
- 浅いものから深いものまである
- 光の角度によって見えやすさが変わる
主な発生原因:
- 搬送中に他の製品や治具と接触
- 作業台や棚の角に当たる
- 梱包材の金属部分が接触
- 作業者の工具やアクセサリーが触れる
- 自動搬送装置のガイドレールとの摩擦
予防策:
- 製品同士が直接触れないよう間隔を空ける
- 搬送治具に緩衝材(ウレタン、フェルトなど)を貼る
- 作業台の角を丸めたり保護する
- 作業者は時計や指輪を外す
- 保護フィルムを早い段階で貼付
打痕(だこん)
製品に何かが当たってできた凹み傷です。
特徴:
- 丸い、または不定形の凹み
- 周囲が盛り上がることもある
- 塗装がある場合、塗膜が割れていることがある
主な発生原因:
- 工具や部品の落下
- フォークリフトやパレットとの衝突
- 積み重ね時の過度な圧力
- 取り扱い時の不注意な衝撃
予防策:
- 製品の上に物を置かない
- 工具は決められた場所に保管
- 積み重ねる際は保護材を挟む
- 搬送経路を整理整頓し、障害物を除去
割れ・クラック
材料が裂けたり、ひびが入ったりした状態です。
特徴:
- 線状または放射状のひび
- 深さは表面だけの場合と貫通している場合がある
- プラスチック、ガラス、塗装面などに発生しやすい
主な発生原因:
- 過度な応力(曲げ、ねじり)
- 衝撃
- 温度変化による応力
- 材料の劣化や欠陥
予防策:
- 材料の選定時に強度を考慮
- 加工時の応力を最小限にする
- 温度管理を適切に行う
- 材料の保管状態を良好に保つ
擦り傷
表面が擦れて白っぽくなったり、光沢が失われたりした状態です。
特徴:
- 広い面積にわたる曇り
- 光沢の低下
- 細かいキズの集合
主な発生原因:
- 梱包材との摩擦
- 清掃時の不適切な布の使用
- 製品同士の擦れ
予防策:
- 柔らかい梱包材を使用
- 清掃には専用のクロスを使用
- 搬送中の振動を抑える
汚れ系の不良
汚れは、製品本来の表面に異物が付着している状態です。種類によって除去の難易度が大きく異なります。
異物付着
ほこり、繊維、金属粉などの固形物が表面に付いている状態です。
特徴:
- 小さな点状または粒状
- 色が異なるため目立つ
- 拭き取りで除去できるものと、固着して取れないものがある
主な発生原因:
- 作業環境の清浄度不足
- 作業服からの繊維くず
- 加工時に発生した切削粉や研磨粉
- 梱包材からの紙粉
- 塗装時のゴミの混入
予防策:
- 作業エリアの定期的な清掃
- エアシャワーやクリーンブースの活用
- 作業服は清潔で毛羽立ちにくいものを使用
- 加工後の清掃を徹底
- 塗装ブース内の清浄度管理
油汚れ
切削油、防錆油、作業者の手の脂などが付着した状態です。
特徴:
- べたつきがある
- 光沢が不均一になる
- ほこりが付着しやすくなる
- 時間が経つと変色することがある
主な発生原因:
- 加工後の洗浄不足
- 素手での取り扱い
- 油の飛散
- 搬送治具に残った油
予防策:
- 加工後は必ず脱脂洗浄する
- 製品は手袋を着用して扱う
- 治具も定期的に清掃
- 作業エリアの油飛散を防止
指紋
作業者の指の跡が表面に残った状態です。特に光沢のある表面で目立ちます。
特徴:
- 楕円形の模様
- 皮脂の成分で後から変色することがある
- 拭き取りで除去できる
主な発生原因:
- 素手での取り扱い
- 手袋の使用忘れ
予防策:
- 清潔な手袋の着用を徹底
- 手袋は定期的に交換
- 必要に応じて保護フィルムを使用
水垢・水染み
水滴が乾燥した跡が残った状態です。
特徴:
- 白っぽいリング状または不定形の模様
- 除去が難しいことがある
主な発生原因:
- 洗浄後の乾燥不足
- 水質の問題(ミネラル分が多い)
- 結露
予防策:
- 洗浄後は速やかに完全乾燥させる
- 純水や脱イオン水を使用
- 温度・湿度管理で結露を防止
シミ・変色
部分的に色が変わった状態です。
特徴:
- 周囲と色が異なる
- 拭き取りでは除去できない
- 時間経過で悪化することがある
主な発生原因:
- 薬品の付着
- 長時間の水分接触
- 紫外線や熱による変色
- 異種金属との接触(電食)
予防策:
- 薬品使用後は十分に洗浄
- 水分は速やかに拭き取る
- 直射日光や高温を避けて保管
- 異種金属との接触を避ける
印刷不良
印刷された文字、マーク、デザインに関する不良です。外観だけでなく、製品情報の正確性にも関わります。
位置ズレ
印刷が本来あるべき位置からズレている状態です。
特徴:
- 印刷位置が左右・上下にズレている
- 製品によってズレ量が異なる
- ズレ量が許容範囲外
主な発生原因:
- 印刷機の位置決め不良
- 治具の精度不足
- 製品の寸法バラツキ
- 版(スクリーン)の位置ズレ
予防策:
- 印刷機の定期的な位置校正
- 治具の定期点検と調整
- 製品の寸法管理を徹底
- 始業時と定期的な位置確認
かすれ
印刷が薄くなったり、部分的に欠けたりしている状態です。
特徴:
- 文字や線が薄い
- 部分的に印刷されていない
- 濃度が不均一
主な発生原因:
- インク量不足
- インクの粘度異常
- 印刷圧力不足
- 版の目詰まり(スクリーン印刷)
- 前処理不足(密着不良)
予防策:
- インク量を適切に管理
- インクの粘度を定期的にチェック
- 印刷圧力を適正に設定
- 版を定期的に清掃
- 表面の前処理を徹底
にじみ
インクが広がって、輪郭がぼやけている状態です。
特徴:
- 文字や線の輪郭が不鮮明
- インクが設計以上に広がっている
- 細かい文字がつぶれる
主な発生原因:
- インクの粘度が低すぎる
- インク量が多すぎる
- 印刷圧力が強すぎる
- 乾燥が遅い
- 表面が粗すぎる
予防策:
- インクの粘度を適切に調整
- インク量を減らす
- 印刷圧力を下げる
- 乾燥条件を見直す
- 表面の粗さを適正化
色ムラ
印刷の濃淡が不均一な状態です。
特徴:
- 部分的に濃い・薄いがある
- 全体的に濃度がバラついている
- 製品ごとに色が違う
主な発生原因:
- インクの攪拌不足
- 版の状態が不均一
- 印刷圧力のバラツキ
- 乾燥ムラ
予防策:
- インクを使用前に十分攪拌
- 版を均一な状態に保つ
- 印刷圧力を一定に管理
- 乾燥条件を均一にする
文字の欠け
印刷された文字の一部が欠けている状態です。
特徴:
- 文字の一部が印刷されていない
- 読めない文字がある
主な発生原因:
- 版の破損や目詰まり
- インク供給不足
- 異物の付着
予防策:
- 版の定期的な点検と交換
- インク供給系統のメンテナンス
- 印刷前の表面清掃
印刷の剥がれ
印刷後、インクが表面から剥がれた状態です。
特徴:
- 印刷が部分的または全体的に剥離
- 擦ると簡単に取れる
主な発生原因:
- 前処理(脱脂、プライマー)不足
- 硬化不足
- 不適切なインクの選択
予防策:
- 表面処理を徹底する
- 硬化条件(温度、時間)を適正化
- 材質に合ったインクを選択
- 密着性試験を実施
外観検査の実施方法
不良を確実に見つけるには、適切な検査方法が必要です。
目視検査
人間の目で直接確認する最も基本的な方法です。
ポイント:
- 照明:明るく均一な光源を使用。斜光も併用して凹凸を確認
- 角度:複数の角度から観察。光の反射で見えるキズもある
- 距離:指定された検査距離(通常30〜50cm)を守る
- 時間:1製品あたりの検査時間を決め、見落としを防ぐ
- 環境:集中できる静かな環境。適度な休憩で疲労を防ぐ
拡大検査
ルーペや顕微鏡で拡大して確認する方法です。
対象:
- 微細なキズや異物
- 印刷の細部
- 表面処理の状態
自動検査
カメラとAIを使った自動検査システムです。
メリット:
- 検査速度が速い
- 人による見落としがない
- 24時間稼働可能
- データを蓄積できる
デメリット:
- 初期投資が大きい
- 検査条件の設定が難しい
- 複雑な判定は苦手
検査基準の考え方
どの程度の不良を許容するかは、製品の用途によって異なります。
致命的不良
製品の機能や安全性に影響する不良。絶対に許容できません。
例:
- 貫通する割れ
- 製品番号の欠損
- 鋭利なバリ
重欠点
性能や外観に大きな影響がある不良。原則として許容しません。
例:
- 目立つキズ(長さ10mm以上など)
- 印刷の大きなズレ
- 変色
軽欠点
性能には影響しないが、外観を損なう不良。製品によっては許容される場合があります。
例:
- 小さなキズ(長さ3mm以下など)
- 目立たない位置の小さな汚れ
- わずかな色ムラ
検査基準のポイント:
- 基準は明文化し、誰が見ても同じ判定ができるようにする
- 限度見本(OK/NGのサンプル)を用意する
- 定期的に検査員の判定能力を確認する
- 顧客の要求と自社基準を一致させる
不良発生時の対応
不良が見つかったら、以下の対応を取ります。
1. 隔離
不良品を良品と混ざらないよう、すぐに分離します。
2. 記録
不良の種類、発生数、発生時刻などを記録します。データは改善に活用します。
3. 原因調査
なぜ不良が発生したかを調査します。「なぜなぜ分析」などを使って根本原因を特定します。
4. 応急処置
不良の拡大を防ぐため、すぐにできる対策を実施します。
5. 恒久対策
根本原因に対する対策を立案し、実施します。効果を確認し、標準化します。
よくある誤解と注意点
誤解1:「外観不良は機能に影響しないから重要でない」
外観は製品の第一印象を決めます。顧客は外観で品質を判断するため、外観不良は企業イメージに直結します。
誤解2:「検査を厳しくすれば品質は上がる」
検査で不良を見つけることは重要ですが、根本的な品質向上にはなりません。不良を作らない工程作りが本質です。
誤解3:「自動検査があれば人は不要」
自動検査は強力なツールですが、複雑な判定や突発的な異常の発見には人の経験と勘が必要です。両者を組み合わせることが最も効果的です。
誤解4:「熟練者なら見落とさない」
どんな熟練者でも、疲労や環境要因で見落とすことがあります。ダブルチェック体制や自動検査の併用が重要です。
まとめ
外観検査は、製品の品質を守る最後の砦であり、顧客満足に直結する重要な工程です。
重要なポイント:
- 外観不良はキズ、汚れ、印刷不良など多岐にわたる
- それぞれの不良には発生原因があり、適切な予防策がある
- 検査は適切な照明、角度、環境で実施する
- 検査基準は明文化し、誰でも同じ判定ができるようにする
- 不良発見時は記録と原因調査を徹底する
- 検査だけでなく、不良を作らない工程作りが本質
外観検査の知識を深めることは、不良の早期発見だけでなく、発生源での予防にもつながります。製造現場で不良の種類と原因を正しく理解することで、品質管理の安定につながります。


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